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えびの高原・硫黄山の噴気活動について

2015.12.16



                             硫黄山(2015年10月29日撮影)

1.えびの高原・硫黄山の噴気について(気象台による発表)
 2015年12月14日、えびの高原の硫黄山で噴気が発生しているとの通報があり、翌15日の気象庁機動調査班による現地調査の結果、硫黄山の火口内の南西側で弱い噴気と硫化水素臭が確認されました。噴気孔の付近では、熱異常域も確認されています。
 火山性地震や火山性微動の発生状況には特段の変化は認められていませんが、えびの高原周辺では、今年7月頃から振幅の小さな火山性微動が発生するなど、火山活動がやや高まってきていることが示唆されているので、今後の火山活動の推移に注意が必要です。(以上、気象台発表まとめ)

 気象台発表資料原文は以下のリンクを参照してください。資料には、噴気の確認位置や熱異常のデータも記載されています。【PDFファイル:1.52MB】
霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)の火山活動解説資料(福岡管区気象台・鹿児島地方気象台)

 硫黄山周辺への立ち入り規制や登山道の規制等は現在実施されていません。えびのエコミュージアムセンターやえびの高原の観光・宿泊施設も通常通り営業されています。

2.硫黄山の状況(12/16の現地調査結果)
 12月16日午後に硫黄山の噴気の状況を視察しましたので、その結果を報告します。なお、調査は登山道を外れずに行いました。あいにくの悪天候の影響で不明な点が多かったので、日を改めて再度調査する予定です。

▲ 今回噴気が確認されたところの位置(国土地理院「地理院地図」を加工して作成)。破線は登山道を示します。

▲ ジオサイト看板からえびの市看板に向かう途中。登山道の右手に噴気孔が確認されました。付近は明らかに分かる硫化水素(H2S)の臭いがしました。登山道の幅はおよそ2m。

▲ えびの市看板付近から見た噴気孔。円で囲った部分に弱い噴気が見られました。写真では残念ながらほとんど分かりませんが。。手前の噴気孔は登山道からおよそ3m、奥の噴気孔はおよそ10mの距離にあります。



▲ 手前側の噴気孔のクローズアップ写真。登山道から望遠で撮影。写真中央のレキのわきから長さ10cm弱、幅1cm程度の明確な噴気孔が確認されました。噴気孔の縁には硫黄と思われる黄色い結晶が付着していました。硫化水素から析出したものと思われます。この周辺には噴気孔と思しき小さなくぼみがいくつか見られました。

 複数ある噴気孔は今のところ登山道の外側にありますので、硫黄山に立ち入られる場合は登山道を外れない(当然、噴気孔には近づかない)ことが重要だと思います。ただ、新たな噴気孔が他の場所に開く場合も考えられますのでお足下には十分ご注意ください。また、噴気に含まれていると思われる硫化水素は空気よりも比重が大きいので、付近のくぼ地などにたまりやすいことに留意してください。そして、気象台による発表や解説を必ずチェックされることをおすすめいたします。

火山ガスについて詳しく知りたい方へ
火山ガスと防災/東工大火山流体研究センター・平林順一(日本火山学会第9回公開講座)
→火山ガスの種類・性質・事故の事例などが詳しくまとめられています。


3.えびの高原および硫黄山について
1.えびの高原の火山活動
 えびの高原周辺には、円形の火口がいくつも点在しています。このように、えびの高原では大 きな火口をつくるような爆発的な噴火が、噴火のたびに火口の位置を変えながら起こってきまし た。多数の火口湖の存在が示すように、えびの高原では地下の浅いところに豊富な地下水の層が存在することから、噴火の際にマグマと地下水が接触してマグマ水蒸気爆発を生じることが多いのが特徴です。また、爆発的な噴火だけでなく溶岩も流しており、硫黄山や不動池では明瞭な溶岩地形が残っています。
図:上空から見たえびの高原と主な火口
図:上空から見たえびの高原と主な溶岩地形

2.硫黄山の火山活動
 えびの高原の東側にある硫黄山は16-17世紀に形成されたとされる火山で、一枚の分厚い溶岩流でできています。また、山頂部に浅い火口を持っていることから、爆発的な噴火も生じたことが分かります。その東にある小さなくぼ地は、1768年の噴火でできたものと考えられています
 硫黄山はもともと現在のような白い色をしていたわけではなく、噴気活動に伴う変質による影響がその原因です。「えびの高原」の名前の由来のひとつとされる「えび色のススキ」も、この噴気活動の影響と考えられています。その噴気に含まれる硫化水素から硫黄が採取されていましたが、1962年以降は行われていません。硫黄山の噴気は2003年以降は確認されていませんでしたが、今回10数年ぶりに観測されました。

3.硫黄山周辺の地下構造
 1990年代前半(噴気が活発だったころ)に実施された電気抵抗探査では、硫黄山周辺では水を多く含む層が広がっていること、硫黄山の地下深部から供給される高温の火山ガスと水との混合が硫黄山周辺の噴気や温泉の源になっていることが明らかにされました。このような帯水層は、新燃岳周辺の地下にも分布していることが分かっており、これらの地域で(マグマ)水蒸気爆発が多いことやマグマ噴火に先立って(マグマ)水蒸気爆発が見られる場合が多いことの理由とされています
 2003年以降、噴気が見られなくなったえびの高原の地下の状況が今どのようになっているかは不明な点が多く今後の研究が待たれますが、今回噴気活動が再開したことは硫黄山の地下に活発な熱水システムが依然として存在することを示しているのかもしれません。また、火山性地震は以前に比べて多い状況が続いており、火山性微動も今年7月以降だけで4回観測されていることから、硫黄山を含めたえびの高原の今後の火山活動の推移に注意が必要と言えるでしょう。

参考文献
1 田島靖久・松尾雄一・庄司達弥・小林哲夫(2014) 霧島火山,えびの高原周辺における最近15,000年間の活動史. 火山, 59, 55-75.
2 鍵山恒臣・山口 勝・増谷文雄・歌田久司(1994) 霧島火山群・硫黄山周辺のVLF,ELF-MT測定. 東大地震研究所彙報, 69, 211-239.
3 鍵山恒臣・歌田久司・三ヶ田均・筒井智樹・増谷文雄(1997) 霧島火山群の構造とマグマ供給系. 火山, 42, S157-S165.



4.その他Q&Aコーナー
Q.現在のえびの高原の様子を知りたいのですが?
A.インターネット自然研究所のページにライブカメラ画像が公開されていますので、ご参照ください。カメラは、えびのエコミュージアムセンターから硫黄山と韓国岳の方に向けられています(更新:1時間おき)。
えびの高原から見た霧島連山(インターネット自然研究所)

Q.新燃岳の規制状況はどうなっていますか?
A.噴火警戒レベル2(火口周辺規制)が継続中です。火口から1kmの範囲と、その周辺の登山道は立ち入りが規制されています。
霧島山(新燃岳)の活動状況(気象庁)

Q.えびの高原の火山防災マップはあるのですか?
A.あります。以下のページに公開されていますので、参考にしてください。
霧島火山防災マップ(環霧島会議)
※火山防災マップ:火山噴火が発生したときの被害を予測し、その範囲を地図化したもの。

Q.火山についてもっと知りたいのですが?
A.以下のページに詳しく紹介されていますので、ご一読ください。

・火山について知りたいとき
火山学者に聞いてみよう(日本火山学会)
→火山に関するさまざまな疑問に火山学者が答えてくれています。
かざんのぺーじ(防災科学技術研究所)
→子ども向けのページですが、おとなでも楽しめます。
USGS Hawaiian Volcano Observatory
→活発な活動を続けるハワイの火山の最新情報が得られます(英文)。

・霧島火山について知りたいとき
霧島火山地質図(産総研・地質調査総合センター)
→霧島火山の成り立ちについて知ることができます。
九州地方の活火山・霧島山(気象庁)
→気象庁によるデータベースです。
Ryusuke IMURA(Twitter)
→霧島ジオパーク顧問で火山学者の井村隆介先生(鹿児島大学)のつぶやきです。

(最終更新日2015年12月18日)

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